軽口雑話 第25話 | 英語が分からない | ![]() |
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サラリーマンの頃はモスクワに駐在していました。一時帰国になると休暇をもらって大好きな旅をしました。モスクワから出てコペンハーゲンかストックホルムへ入ります。そこから先は鉄道で、ヨーロッパ中を旅しました。帰りは殆ど南周りでバンコックやプノンペン、香港にも旅しました。プノンペンは、取引先があるため、商用で寄りました。まだカンボジア戦争前でシアヌーク殿下が若い国王のころでした。彼の主演した恋愛映画を見せられ”オエッ”となった記憶が有ります。 35才のころ社長とぶつかって独立しました。初めの頃はお金が儲からず、四苦八苦しながら長いこと仕事中毒の状態でした。7−8年頑張った頃ようやっと稼いだ金で旅費を捻出し、ユーレイルパスを買ってコペンハーゲンからヨーロッパ入りし、一人旅が実現しました。飛行機はアエロフロートでした。モスクワまでは日本人で一杯でしたがモスクワを過ぎると一挙に減って、私を入れて3人になってしまいました。コペンハーゲンで一泊して鉄道に乗り、ハンブルグ、パリ、カレーからフェリーでドーバー迄渡り、再び鉄道でロンドンまで行き、帰りは飛行機でモスクワ経由東京を目指す。そんな予定を立て、取りあえずコペンハーゲンからハンブルグまで行く計画でした。 コペンハーゲン駅でユーレイルパスをどう使うか駅員に聞いたのですが、相手が何か言ったのに相手の言う英語が聞こえて来ません。”ふふん”と言って分かった振りをしたのが間違いのもとでした。昔はずっと一人旅をして平気で歩いていたのに今回は困惑してどうして良いか見当も付きません。12月24日ごろだったと思います。昼間でも薄暗いコペンハーゲンの街、みぞれが降ってシャーベットのような雪道をジャリジャリという音をさせながら途方に暮れて歩きました。何しろヨーロッパを出るには、ロンドンまで行き着かなければ飛行機に乗れません。2時間もあてど無く考えながら歩きました。考えに考えたあげく、”見栄を捨てて、どんなに恥ずかしくても自分が分かるまで繰り返し聞き返そう。”格好良く”ふふん”と言うには自分の英語が貧弱であると自覚しました。そう決心してからは、事がスムースに運ぶようになりました。 この問題は今でも続いていて、時々分からないのに”ふふん”とか云って先を続けるととんでもない事になることが多々あります。分からなかったら何度でも粘って聞く。特にマレー人との会話は、相手がちゃんと聞いている風でも、こちらと同じように”ふふん”という分かった顔をしますから、まるで鏡を見ているようです。意志が通じていないことが多いので、とにかく意志を通じさせる事を優先させています。自分の英語が悪いことも計算に入れれば、粘って当たり前と云うことになります。 |